全塗装のご案内

好きなクルマは長く乗りたい。誰しも思うことです。

最近は日本でも、モノを選ぶときに「良いか・悪いか」という数字で表せるものではなく、「好きか・嫌いか」という自分の感性で選ばれる方が少しずつ増えてきたように思います。この傾向は、欧米など、いわゆる先進国で強いように感じますが、反対に、いわゆる新興国では、なんでも最新のものを選ぶ傾向が強いように感じます。そもそも「好み」などというものは極めて個人的な感情ですので、他人からとやかく言われる筋合いのものではありませんし、他人がどう思うかなど気にすべきことでもありません。自分が気に入って結婚した嫁に、ブサイクだとか料理が下手そう、なんて他人から言われて離婚しますか?

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弊社のお客様ですが、ちょうど10年前にメルセデスのW124をお持ちになり、全塗装させていただいたことがありました。経費で乗っていたクルマですので、乗り換えようと新車を見に行ったところ、どうにも新しいタイプが気に入らなかった、ということで全塗装して乗り続けることを選択されました。彼は某国立大の工学部を出ておられますので、「機械」に対するこだわりもあったと思います。システムとして新しいかどうかということと、機械として良く出来ているかどうかということとは違いますからね。

<追記>

サーバー・マシンが飛んだときに、古いオリジナルの画像を全て失ってしまいました。運よく、このクルマのオーナーがご自分で撮影された作業中の画像を持っておられ、ご自身のHPの中にあるブログに掲載しておられます。http://ami-ip.net/ 一番右のブログのところから入れます。

それから10年。幸運にも、一度も板金・塗装することなく過ごしてこられましたが、先日、スーパーの駐車場で隣のクルマのドアが強風であおられ、彼のクルマのフェンダー・アーチに傷を付けたそうです。

10年前、彼はシッケンズのカラー・マップの中からご自分の好きな色を選ばれました。純正色ではありません。シッケンズ独特の最も目の細かい薄いブルー・メタリックで、この肌を他の塗料で再現するのは困難だと思います。近似色が1970年代のフェラーリに塗られていました。

彼は10年前の塗料データを保存しておられました。そのデータ通りに調色いたしましたところ、そのまま塗装しても、殆ど差が分からないほどでした。通常、再塗装の場合は、特に薄い色調のメタリックは、10年どころか数年すると焼けて色目がハッキリ変わってしまいますが、さすがはシッケンズ、でした。また、シッケンズのクリアーが、きわめて丈夫であることも再確認しました。塗装した部分の周囲を、ツヤを合わせるため研磨しましたが、十分なツヤを再現することができました。持ちが良いのですね。

W124は1985年から1995年まで生産され、一部の方は「最後の最善のメルセデス」などと表現されます。ドアを閉めたときの「ドンッ」という重量感は、メルセデスだけでなく、その後の多くのクルマで失われてしまったように思います。ちょうど日本はバブル景気でしたので大量に販売されましたが、生産終了からすでに20年。街中では殆ど見かける機会も無くなり、あと10年か20年も経てば立派に「クラシック」の年代に入ります。

お聞きしますと、昨年、ミッションをオーバーホウルされたそうです。また、今年はマフラーを触媒ごとゴッソリ交換されるそうです。両方あわせると、小型の新車が買えそうです。しかし、「まだまだ乗りますよ。10年前に全塗装した選択は間違っていなかった。」とおっしゃったお言葉が印象に残りました。どうやら今の塗装は、現在の状態を見る限り、オリジナルより多少「持ち」が良いようですので、あと5年か10年後に、もう一度、全塗装させていただき、最後に息絶えるW124の1台になっていただきたいものです。

いまは新車を買っても、7-8年も経てば、ほぼタダになってしまいます。中古車にお金を掛けるのは、お金を捨てるようなものだという考え方が一般的ですが、好きなクルマに新車の半分ほどのお金を掛けて7-8年乗れば、そちらのほうが遥かに楽しいと思います。たとえ、それが同じ金額でも、少し見方を変えれば、違う価値観が見えてきますし、あなたの人生を、ほんの少し豊かにしてくれるかもしれません。

前に弊社で全塗装させていただいた某国産車は、ご家族の歴史の生き証人なので、乗り換えるにしのびない、ということでした。欧州では、少し古いクルマがコギレイな状態で走っているのをよく見かけます。ピカピカの新車よりオシャレだと思うのは、僕だけではないと思います。何でも新しいものに買い換えるのではなく、気に入ったモノを長く使うというライフ・スタイルのほうが、心豊かだと感じます。

<追記>

久々にHPを更新いたしましたら、2000年に弊社でエンジンのオーバーホールと全塗装させていただいたお客様からご連絡を頂戴いたしました。

まるで誇大広告のようで気恥ずかしいのですが、なによりも、気に入っていただき、まだ乗っておられることが嬉しくなり、転載させて戴きます。

全塗装が2000年でしたので、間もなく16年になります。
お陰様で今もどこへ乗って行っても、綺麗ですね、と声を
かけられます。

2013年8月から東京に居ますが、こちらで知り合ったXX仲間
でも、こんなXXは見たことない、と言われています。
所有して、22年目。
細かい故障、不具合はありますが、オーバーホール頂いた
エンジンも絶好調です。

XXXさんところの仕事に間違いがないことが証明されてます。
本当に良かったと思っています。
出会っていなければ、とっくにXXは手放していたと思います。

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