ユーノス・ロードスター NA6CE 全塗装

レストア中のユーノスではなく、その投稿をご覧になられた方より全塗装のご依頼をいただきました。このクルマはワン・オーナーですが、ご家族のためにワン・ボックスを購入されたあとも、車検を切ってガレージ保管しておられました。ようやくお子様が手を離れられたのか、ふと、もう一度ユーノスに乗りたいと思い立ち、車検を取られたそうです。しかし、あちこちに若気の至りもあり、外観をオリジナルに戻し、スッキリした塗装にしたい、ということでご相談をいただきました。

いくつか問題がありました。

まず左側ヘッドライト・カバーとボンネットにエア抜きの穴が開いていました。トランクの状態も悪く、これら3点はオーナーが状態の良い中古部品をお持ちでした。右前フェンダーに軽く当たったときにできたヘコミとホイール・アーチのうしろに歪がありましたので、叩いて板金修理しました。また、右ドア、右リア・フェンダー、左・リア・フェンダーの全面にビッシリと塗装の割れが発生していました。これにはビックリ。オリジナルの塗装がこういった割れ方をするのは見たことがありませんので、おそらく、これらのパネルは再塗装されたのではないかと推測しました。ひとたび質の悪い塗装を掛けられてしまいますと、次に作業する際は下地や塗装をすべて剥離しなければ、悪い塗装面の上から、どれだけ丁寧で上質の塗装を掛けても、下から浮いてきますので意味がありません。画像を撮り忘れましたが、1枚だけ、幌の取り付けレール付近に残っていた部分(当然、ここもレールを外したあとで剥離しました)の画像が残っていました。加えて、新車時に左右ボディのプレスラインから下に吹いてあったアンダー・コートの状態が悪く、その上から塗装を掛けても持たないのではないかという不安がありました。どうせのことなら、とアンダー・コートを剥離し、スッキリしたパネルにしました。

ちなみに、剥離剤を使って下地と塗装を落とすと、どれだけキレイに洗浄したつもりでも、どこかに薄く残ってしまい、数年後に塗装が浮いてくることがあります。過去に何度かそれでエライ目に逢いましたので、弊社ではキャンプ用のトーチ・ランプ(あまり高温にならない)で炙りながら、少しずつ落としたうえで、最後に残留物を除去するため、表面を軽くサンディングします。かといって、一気にサンディングで落としてしまいますと、あちこちに小さなフラット・スポットが出来てしまったり、熱で歪んでしまいます。人間、失敗すればするほど、知恵がつくものです。

作業は、あちこちにある小さなヘコミ(打痕)を板金修理し、塗装がひび割れたパネルと側面のアンダー・コート部分は鉄板まで剥がし、鉄板が出た部分にはシッケンズのEP(薄いグリーンで湿気を通しません)を塗布し、各パネルの歪を抜いたうえで、ボディ全面にホワイト・サーフェサーを吹きました。これをツルツルに磨き出し、オリジナル・カラーを吹き、しっとりした塗装面になるよう、クリアーを1回余分に吹いて少しガン肌を落としました。下地からクリアーまで、すべてシッケンズを使用しています。当然ながら、外せる部品は全て外しますが、フロント・ガラスを抜いてフレームを塗装している画像が見当たりません。撮り忘れたようです。

せっかく塗装がキレイになったのに、目に見える部品がボロっちいままだと少々ガッカリします。ということで、アチコチの目に見える部品や窓回りのゴムを新品に入れ替えました。最近、ユーノスの部品がいろいろ再生産されますので、欲しい部品の多くが新品で入手できます。嬉しいことです。が、しかし、幌を止めているゴム付きレールが、どうやってもボディにピッタリ添わないのです。半日掛けて修正してみましたが、なぜかネジを締めると外側のゴムが浮いてしまいます。仕方がないので接着剤でゴムを貼り、馴染むのを待つことにしました。いやはや、参ったタヌキは目で分かる。作業時間は約2週間でした。

ということで、普通なら、ここで完成写真を掲載して「おおっ」と思っていただきたいのですが、なんと間抜けなことに、完成後の画像を撮り忘れておりました。

このユーノスもそうですが、思い入れのあるクルマは捨てがたく、どうせ乗るならキレイな状態で乗りたい、と思われたときは、ご相談ください。