ご報告と感謝 心筋梗塞

昨年の12月26日に心筋梗塞を発症しました。

電話に出られなかった時も多かったため、会社を閉めたのか、と思われ、慌てて見に来られた方もおられました。

ようやく体調も「そこそこ」まで戻り、4月から仕事に復帰できる見通しです。また、クスリと運動を続けていれば、血圧が高いこと以外には悪いところや悪い数字もありませんので、少なくとも10年程度は元気でいられるでしょうとのことです。

皆様にはご迷惑とご心配をおかけしたことをお詫び申し上げますとともに、頂戴いたしましたご厚意とご支援に、心から感謝申し上げます。

心筋梗塞は予兆なく起こるようですし、それなりのお歳の方には、いつ起こっても不思議はないことのようですので、少々、経験談を。僕の誤解もあるかもしれませんので、その点はお含みおきください。

出社し、自転車で駅前のコンビニまで振り込みに行き、帰って来て社屋の前から階段まで、10mほどの距離を歩いている間に強い胸痛が起こりました。収まるかと思い、5分ほど階段の下で座って様子をみましたが、収まる気配はなく、社員に救急車を呼んでもらいました。すでに、とても歩ける状態ではありませんでした。心筋梗塞は時間との勝負です。1分でも早く措置を受けなくてはなりません。

病院へ行くとすぐさま検査、家族の到着を待ちます。とは言うものの、時間が掛かったり、待てない場合は見切り発車なのでしょう。カテーテルと言えども手術ですので、基本的には家族の承諾(サイン)が要るとのことでした。医師から手術内容の説明を受け、意識はハッキリしていましたので、死亡する確率、行う手術の難易度や成功率について質問しました。それにより、家内に伝えておかなくてはならないこともあるからです。具体的な数字は聞かなかったと思いますが、心配するほどではないと聞いたように思います。

発症したのが9時30分ごろ。手術開始は11時22分でした。

小さなMRIのような機械(レントゲン?)で心臓の動きを見ながら、右手首内側の血管からカテーテルを入れていきます。意識がハッキリしていましたので、僕にもモニターを見せてくれるよう、頼みました。二人の医師が担当しました。「ああ、やっぱり7番やね」という会話とともに、バルーン(ゴム風船のようなもの)を膨らませたのでしょう、真っ暗で外形しか見えてなかった心臓に、サーッと血管が映り、血液が流れていくのが見えました。そして、それとともに胸痛は徐々に引いていきました。そして冠動脈の詰まっていたところにステントという金属製のパイプを残し、手術自体はあっけないというか、痛みもなく、短時間で終了しました。7番というのは血管の位置を示し、左右に分かれた「すぐ左側」です。あとから調べますと、左側より右側が詰まった方が死亡率がグンと高いのだそうです。その意味では運が良かった。

実は、昨年の2月と3月に、今回施術を受けた病院ではなく、行きつけの病院で結構マトモな検査を受けていました。僕は長年の胃潰瘍持ちで、過去6-7年間だけでも3回、出血による内視鏡手術を受けていたからです。いつも同じ場所から出血し、出血量が多いため、出血すると輸血しなければ持たない状態でした。そのため潰瘍部分が白くコンモリしたコブ状になってクリップが止まらず、次に出血したら開腹手術ですと言われていました。昨年、最後の出血から2年半か3年経過していましたので、胃カメラで経過を見るとともに、CT、MRI、心エコー、などなど、ひと通りの検査をしました。その結果から見ても、心筋梗塞を予見できるような問題は何もありませんでした。胃にあった赤いポツポツも、取って検査したところ、悪いものではありませんでした。MRIで脳の血管に小さなコブのようなものが見つかりましたが、急を要するほどのものには見えないため、来月でも時間のある時に造影剤を流してCTで見ましょうか、と言われた程度でした。

ところが、その8か月後、昨年の11月に胃の検診を受けたときに、高血圧だと言われました。この病院では15年以上受診していましたので、過去のデータを見てもらいましたが、過去に高血圧になった記録はありませんでした。携帯血圧計で毎日計測しながら、しばらく様子を見ましょう、ということになりましたが、12月に入ると、血圧が210を超える日が続きました。そこで副腎ホルモン、腎臓、肝臓、前立腺癌などの検査をしましたが、いずれもセーフ。まずは血圧を下げ、安定してから精密検査をしましょう、ということになりました。そして降圧剤を飲み始めましたが、その時点でも、心筋梗塞は予見できなかったと、あとからですが、担当医師が言っておりました。他の医師にも尋ねましたが、よほどのことがない限り、心筋梗塞を予見するのは極めて困難なのだそうです。そうして、降圧剤を飲み始めて3週間目に心筋梗塞を発症しました。

手術直後はベッドで起き上がるのもNGです。入れたステントがズレたり動いたりしてはいけないからだそうです。排尿も管を通され、寝たままです。前に潰瘍で動けなくなったときに入れられ、死ぬほど痛かった記憶がありますので断固拒否しましたが、結局、入れられてしまいました。痛い。実に痛い。

手術の翌々日に心エコーを撮りました。心臓の先尖部分、ならびに、その周囲が動いていません。駆出率(血液を吐き出す率)は45%程度と判断されました。60%以上が正常値だそうですが、循環器の医師に聞くと、心エコーの機械で計算される駆出率はアテにならず、経験豊富な方の目視の方が正確なのだそうです。エコーの機械を操作している方の動作を観察しますと、画面上に出た画像の上にマウスで「枠」を置きます。それを何回か繰り返しておられました。おそらく、その枠の範囲を機械が数値化し、それを積分することで心臓が膨らんだ時と収縮したときの容量を計算しているのではないでしょうか。ということは、枠の置き方が少しズレただけでも出てくる数字は変わる。だから数字が48か50かなんて差は大勢に影響なく、数字よりもベテランの方が静止画を繋ぎ合わせた動画で「動作」そのものを見て、どの程度かという判断をした方が正確だ、と言うことではないかと想像します。事実、2種類の機械で、二人の方が別々に出した数字そのものは53と62ですが、所見はいずれも45%程度でした。我々の仕事も同じですが、機械より職人の勘のほうが正確な判断が下せるようです。

それはともかくも、心筋梗塞で血液が止まっている間に心臓の筋肉が壊死します。動かない筋肉には二種類あり、壊死して戻らないものと、気を失っているような状態で、時間とともに戻るものの二種類です。壊死したものは二度と生き返りませんので、どの程度壊死したのか、どの程度戻るのかによって回復度は変わるそうです。筋肉の中で内出血した場合は、戻らない確率が高いとのこと。内出血が無い場合は、驚くほど回復度が高いこともあるそうですが、僕の場合は術後2日目のデータでは内出血の痕跡があったそうです。

医師からは、1カ月、3カ月、半年、と言われました。まずは術後1カ月で心エコーをして回復度を見る。一般的には、最初の1カ月で「気を失っている細胞」の多くが目を覚ますのだそうです。回復の速度は徐々に遅くなり、6カ月目あたりで回復するものは回復してしまう、言い換えれば、それ以上は回復する速度や量が大幅に落ちるというふうに理解しました。

入院中は常に無線の心電計を装着し、看護ステーションで24時間モニターします。不整脈を監視するためだそうです。術後3日目ぐらいから歩けるようになりました。リハビリ担当者とともに、心拍数や血中酸素濃度を測りながら廊下を歩きました。その後は同じことを階段を上がり下がりしながら行いました。1週間目ぐらいに、心電図をぶら下げてエアロバイクを漕ぎました。回復具合を見ることと、リハビリする際の心拍数のリミットを見るためでした。リミットは110だそうです。

1月6日に退院しました。病院は、もう少し入院して欲しかったようですが、入院していても毎日することがなく、リハビリの講習や簡単な検査だけで、ヒマでしかたなかったからです。それに、クスリだと思って食べますが、病院食はツライ。退院する日に、再度、心電図で波形と不整脈のチェック、造影剤を流してMRIで血液の流れをチェックします。手術直後と大きな変化はありませんでした。あとのリハビリを受けに来ることと、当分はクルマの運転は控え、家でおとなしくしていること、その後の検査等を行きつけの病院で継続して受けることを条件に目出度く退院しました。

2月17日。術後1カ月半で最初の心エコーを撮りました。行きつけの病院です。ここには昨年、心筋梗塞発症前の心エコー結果が残っています。その時のデータは、まったくもって正常でした。ところが、2月17日のデータは、あまり捗々しいものではありませんでした。期待していただけにガッカリした僕は、同じ検査を手術を受けた病院でも受けました。これなら同じ機械、同じ担当者ですので、術後2日目のデータと直接比較ができるからです。しかし、その結果は、「前回と著変なし」で、ほぼ同じ。画面の左右に前回と今回の動画を並べて見せてくれましたが、シロートの僕の目にも大きな改善と言うか、違いは見られませんでした。要するに、術後2日目から、ほとんど回復していないということでした。

図形の一番濃い部分は「動いていない部分」、ほんの少し薄い部分は

「殆ど動いていない部分」。色の入っていない部分は正常に動作。

ハッキリ、くっきりなのもアレですので、画像を少しボカしてあります。

上が昨年取った発症前の正常な波形。下が今回の波形。

心臓リハビリを1月末から始めました。有酸素運動を1日30分程度、ということで、散歩が一番いいそうです。誰に聞いても、そう言います。しかし、僕の自宅周辺は坂が多く、ちょっと歩くといっても結構疲れます。それに、毎日同じところを歩くと、僕の性格からして、すぐに飽きてしまいます。前にやったことがあり、すぐに飽きてサボってしまいましたので、これは断言できます。続きません。ということで、心拍計の付いたエアロバイクを安く入手し、毎日漕ぐことにしました。これなら新聞を読みながら、テレビを観ながらできますので、まだマシです。たまにサボることもありますが、いまのところ続いています。長年の運動不足もありますので、それなりに疲れますし、元気な日に少し頑張って漕ぐと、すぐに心拍数がリミットを超えて120以上に上がってしまいます。バイクから降りると足元がフラッとしたりします。昼間でも、10分か15分、立ち話をしていると、左足の内側が上から下までシビレがきれてきます。俗に言う「ウンコ座り」の姿勢で作業すると、15分ほどで立てなくなります。血液の循環が良くないようです。毎日降圧剤を飲んでも、なかなか血圧が下がらないため、降圧剤の量を増やしてもらいましたが、それでも、なかなか150ぐらいから下がらず、いまでも高い日は180近くまで上がります。少し無理をすると、異常に疲れます。なんだか肩の上に20kgぐらいの重量が掛かっている感覚です。やはり、あちこちの血管を精密検査しなくてはならないのでしょうかね。

毎日おとなしくしていましたので、その間に、長年の宿題だった睡眠時無呼吸症候群の検査をしました。イビキもかきますし、息子二人から、寝ている間に時々、呼吸が止まる、と言われていたからです。近所で簡易検査のための機械を持っているところを探しましたら、最近できた耳鼻咽喉科が持っていることが分かりました。フィリップス製の機械で、腕と指に装着し、胸にマイクのようなものを張り付け、一晩かけて計測します。なんだか安っぽい機械でしたが、ネットで捜してみると、なんと78万円もします。元電機メーカーの私が見るに、10万台作れば機械の原価は2万円以下ではないかと。78万円の半分ぐらいはデータの解析ソフトではないでしょうか。それにしても医療機器は、家庭用エレベーターと同じで、いったい、いくらが適正な価格なのか、サッパリ分かりませんね。それはさておき、解析の結果は「軽度」で、精密検査や治療の必要はない範囲のようです。簡易検査ですし、その日の体調もありますので、また半年後にでもやろうと思います。保険ですと5,000円程度のもので、年に2回は認められるそうです。しかし、その解析結果を見ますと、僕はどうやら全体に眠りが浅いようです。と言われても、こればかりはどうしようもありません。耳鳴りについても相談し、クスリをもらいましたが、まったく効果はありません。他の医者に聞くと、決定的な治療法などないようです。

呼吸が止まった回数、いびきの程度、酸素濃度、睡眠の深さ等々、

2枚にわたって解析してくれます。

困るのは、血液をサラサラにする薬を飲んでいますので、なかなか血が止まりません。寝ている間に鼻の横を引っ掻いたのですが、これがなかなか治らない。カサブタが出来ても、それをまた寝ている間に引っ掻くと元戻り。そういえば退院するときに医師が、交通事故だけはしないでください、と言われましたが、確かに。

僕は心筋梗塞を少しナメていたようです。直接、間接に、短期間で普通の生活に戻った例を聞いたこともあり、正直、1カ月もすれば、なんて思っていました。発症前の体調が悪かっただけに、術後は飛躍的に回復したように感じていたことも、そう思った理由でした。しかし、そうではありませんでした。実際に検査し、それを昨年とった発症前のデータと比較しますと、一目瞭然。最初の検査後は、しばらく「かなり」落ち込みました。少し無理をしてヨレヨレにもなりました。しかし、ようやく体調に意識がついてきたと言うか、少し慣れてきました。

ある医師がウマイ表現をしてくれました。いまは 3 lit.のエンジンが 1.5 litになった状態。それでも走るコツさえつかめば普通に走れる。しかし、次に再発すれば、今度は660ccになる。3 lit. のクルマで軽のエンジンじゃ、さすがにシンドイ。せめて運動でもして、再発防止に努めてください。なるほど。そういうことか。

とは言うものの、心筋梗塞の症状や後遺症、あるいは体調は、ひとり、ひとり、すべて異なります。いくら完璧にリハビリや生活習慣の改善を行っても、心臓にステントを入れただけで、他の部分がすべて良くなったわけではありませんので、再発するときは再発するようです。再発の予見も、極めて困難というか、不可能のようです。そういうことを理解というか、納得しましたので、そういう意味では開き直るしかないようです。心配してもキリはない。心筋梗塞は「運・不運」の世界のようですし、あとは運動を続けること、ラーメン食っても汁まで飲まない、せいぜい、こんなことぐらいですかね。それにしても、降圧剤を増やしても、一向に血圧が下がってこないのは困ったものです。そもそも心筋梗塞になる前に血圧が上がった原因も、特定できていないままです。次は、高血圧の原因を探すことですね。震災以来、死ぬことに対する恐怖のようなものはありませんが、寝たきりだけはゴメンです。